INSIDE FILM Magazine, Australia May2005

IFMagazine

「あなたがレストランに行くとしたら、その晩の成功は食べ物だけではないでしょう。雰囲気やサービス、デザイン、隣に座っている人々。もちろんあなたといっしょにそこへ行く人も。全てに関係してくるでしょう。」とウォン・カーウァイは説明する。「これが、私が映画を作るときのやり方なんだ。私の俳優たちは、彼ら自身の解釈でキャラクターを書き込むし、どのクルーのメンバーも制作に関する創作の自由を持っている。」 彼はしかし、もっと脚本家たちと仕事をしたいとほのめかしている。それは制作前の段階ではなく、映画を作っている最中に、ということだ。わたしは彼になぜ『2046』のときに脚本家と仕事をしなかったのか尋ねた。「誰も私と仕事しなかっただろうね!」と彼は謙遜して苦笑した。「この映画の制作には5年かかったんだ。長いだろ。」 『2046』の脚本は、常に作ってあり、制作中と制作後は、声をかぶせるナレーションに大きく依存した。
彼とドイルの関係は、とても緊密だ。「我々は映像効果について互いに議論し合ったりする必要はない。我々の仕事は非常に本能的である。私は彼の物を作る時のプロセスと映像センスを100%信用している。と同時に、彼のことはすごくこき使うんだけどね。全ての撮影監督がこういう仕事を楽しんでいるわけではない。私はいつも彼に、普通では撮る事のできないようなライトのコンディションを、彼のチャレンジとしてぶつけるんだ。とにかく彼は、すごい才能がある。」 
ウォンは彼のチームに多大な信頼をしているし、彼らの創造的な技術に多くを委ねている。それが彼の映画が、映画的に豊かで完成されている原因なのは間違いない。彼は、全てのものに影響されると言っている。しかしわたしは、彼の口から“ヒッチコック”という言葉を引き出すことに成功した。ヒッチコックというのは、彼に大きな影響を与えただろうし、次回作であるニコール・キッドマン主演の映画に大きな関わりがある。US$25mの映画、中国とヨーロッパで撮影されるこの映画は今年の後半撮られる。彼は、オーストラリアの映画の女神であるキッドマンを選んだ理由に、「彼女は危険であり、かつ危機の中にある。それがほとんど全ての理由だ。強さの強度と深い脆さが対置しうる品質だ。」
彼はキッドマンに照準を据えて秘密のストーリーのアイディアを考え、今回はセットで脚本家を使うことになるだろう。彼は言う。「最良の映画監督とは建築家のようなもので、別世界に繋がるまでを観客に提供するものだ。」 『2046』は驚きに満ちて、希望のない物語世界だ。だが、観客が逃げ込むには十分な価値があるロマンチックな準夢のような情景がある。

(オーストラリアで『2046』が2005年5月26日に公開されるにあたって行われた映画雑誌のインタビュー。その一部です。)